
Hidehiro Hanmoto 半本 秀博
Biology
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学術論文:Repetitious Production of Similar Karyotypes in Different Plants of Haplopappus gracilis, an Annual Asteraceae, Following Exposure to lonizing Radiation
Hidehiro Hanmoto 1, Kazuo Fujikawa 2, Tesuo Itoh 3 and Yoshihiko Yonezawa 4 1 Ohmiya High School, Saitama 330-0834, Japan 2 Faculty of Science and Engineering, Kinki University, Higashiosaka 577-8502, Japan
3 Atomic Energy Research Institute, Kinki University, Higashiosaka 577-8502, Japan 4 Department of Biology, Naruto University of Education, Naruto 722-8502, Japan Cytologia 68(4) :413-424,2003
学術論文:Cytogenetical Evidence for Latent Centromeres and Reactivation in Chromosomes of Haplopappus gracilis (Asteraceae)
Hidehiro Hanmoto 1, Yoshihiko Yonezawa 2 and Katsuhiko Kondo 3 1 Ohmiya High School, Saitama 330-0834, Japan 2 Department of Biology, Naruto University of Education, Naruto 722-8502, Japan
3 Laboratory of Plantchromosome and gene Stock, Graduate School of Science, Hiroshima University, Kagamiyama, Higashi-Hiroshima, 739-8256, Japan Cytologia 72(4) :459-464,2007
主要論文 日本語要旨
Cytogenetic and molecular cytogenetic studies on chromosome evolution byreconstitution progress in Haplopappus gracilis (Asteraceae)
(キク科 Haplopappus gracilis の染色体構造・数的変化による染色体進化の細胞遺伝学的及び分子細胞遺伝学的研究) 半本秀博 Hidehiro Hanmoto
高等植物において、核型の進化は、主として、染色体の構造的変化又は数的変化によって生ずると考えられている。
一年生キク科植物のHaplopappus gracilis (Nutt.) Gray(2n=4)(Kansas-Hiroshima No. 1=KH-1)の染色体数は、近縁種であるH.ravenii Jackson(2n=8)の染色体から再構築されたものと考えられているが、その過程については2つの考え方がある。すなわち、相互転座によるものとする考え方と、染色体切断とそれに引き続く末端融合によるものとする考え方である。
本研究は、H. raveniiの2n=8染色体からH.gracilisの2n=4染色体が生じた過程を、KH-1を用いて、放射線による染色体の人為的な切断、自然誘発的に染色体の構造変化を起こした個体の詳細な核型分析並びにArabidopsis型テロメア反復配列を用いた蛍光インシチュ・ハイブリダイゼーション(FISH)による分子細胞遺伝学的分析によって明らかにしたものである。
発芽直後のKH-1の種子に電離放射線(X線又は原子炉中性子線)を照射して人為的に 染色体の切断を誘発し、切断部位の解析を通じて、H. ravenii からKH-1の染色体が再構成された際の融合部位を分析した。その結果、放射線照射後48時間目に根端細胞で染色体を観察した場合には、観察したすべての個体で染色体の切断を含む構造変化が生じていた。また染色体の切断は、2組の染色体対のいずれにおいてもほぼ染色体全体で均一に生じており、切断が特定の部位に集中していることは観察されなかった。これは、放射線による染色体の切断、すなわちDNAの切断が染色体全体でランダムに起こっているためと考えられる。しかし、放射線照射後約2ヶ月目に染色体を観察したところ、210個体のうち12個体で染色体異常があり、そのうち1個体を除いた全てに正常な核型と染色体の構造変化を伴った核型が混在していた。構造変化を伴った核型をもつ細胞はその個体から生じた多くの根のうちの数本においてのみ観察された。また、1つの個体で観察された構造変化を伴った核型はすべて共通していた。このことは、放射線照射によって種子の幼根の細胞に生じた染色体の構造変化の大半はその後の細胞分裂の過程で除去されて正常な核型をもつ細胞のみが生き残ることができるが、構造変化の種類や切断部位によっては細胞分裂の過程で除去されず、増殖して独立した根を形成したものと推定された。すなわち、放射線照射による染色体の構造変化は染色体上のいずれの部位にも生ずるが、『生残できる』構造変化は限られていると考えられた。
次にこの『生残できる』染色体の構造変化について、その切断場所を特定することを試みた。染色体の構造変化を伴った核型について、それぞれの染色体について、分裂期中期染色体の大きさ及び動原体の位置、分裂期前期染色体における早期凝縮部位の分析によって、構造変化を起こした部位を特定した。その結果、KH-1の第1染色体(1g)の長腕介在部(長腕端よりおよそ1/3の部位)と第2染色体(2g)の長腕介在部(長腕端からおよそ1/3の部位)に合計5箇所の切断部位中2箇所に集中することがわかった。これら2つの部位は、Tanaka(1967)やIkeda(1987)が、H. raveniiの染色体からKH-1の染色体が再構築された際の染色体の融合部位と仮定している部位にほぼ一致した。
一方、放射線照射個体の中に見いだされた2n=5の核型に含まれる1個の余分の動原体の起源について分析した。2n=5の核型は2個体あった。そのうちの1個体は正常な核型を示す根とのキメラであったが、もう1個体は植物体全体が2n=5の同じ核型から構成されており、放射線照射によって新たに生じたものではなく、その個体の形成に関与した配偶子が形成されるときに生じた構造変化であると考えた。しかし、これら2個体の核型はいずれも1個の正常な1gと2個の正常な2g、1gよりもやや小さな染色体、及び染色体全体がほぼ早期凝縮部(ECR)からなる断片状の染色体からなっており、同一の核型であった。これらの染色体のうち断片状の染色体は、そのほぼ中央部に動原体をもっており、分裂期後期に両極に分配された。従って、この2n=5の核型は、2n=4の核型よりも余分に1個の動原体をもっていた。
1gよりもやや小さな染色体と断片状の染色体をあわせた大きさと、そのECRの分布は正常な1gとよく一致しており、1gの長腕端からおよそ1/2のところで切断が生じたと仮定すると、観察事実と矛盾なくこれらの染色体の起源を説明できることがわかった。
一方、KH-1の保存個体群中に見いだされた動原体が中部から次中部に転移した第1染色体〔1g(J)〕と正常な1g〔1g(V)〕をヘテロにもつ個体と1g(V)をホモにもつ個体の交雑によって生じた子孫の中に2n=5の核型を示す個体が見いだされ、この個体の核型の解析もあわせて行った。その結果、この個体の核型は1個の正常な1gと2個の正常な2g、2個の1gのおよそ1/2の大きさの染色体から構成されており、2個の新しい染色体は1gの長腕の動原体からおよそ1/3の部位で切断が生じていると推定された。
これら3個体は、いずれも1gの長腕内で染色体の切断が生じたと考えられるが、Tanaka(1967)やIkeda(1987)は、1gはH. ravenii の3個の染色体から再構成されたと考えている。1gの長腕内にはこれらの染色体に由来する不活性化した動原体が2個隠されており、染色体の切断によってこれら2個の動原体が別々に再び活性化し、2n=5の核型の起源となったと考察した。すなわち、H. raveniiからKH-1 への核型の進化は、Jackson(1962)の染色体相互転座説ではなくてTanaka(1967)やIkeda(1987)のH. raveniiにおける染色体切断と末端同士の融合によって生じたものであるとの説が妥当と考えた。
染色体の末端にはテロメア構造があり、染色体の末端同士の融合を防ぐしくみとなっている。もし、H. raveniiの染色体の末端同士が融合してKH-1 の染色体を生じたものとすると、KH-1の染色体中にはH. raveniiの染色体に由来すると考えられるテロメアあるいはその痕跡が存在するはずである。そこで、Arabidopsis型テロメア反復配列(TTTAGGG)nを使ったFISHによりKH-1の染色体に内在すると考えられるテロメア様の塩基配列の検出を試みた。その結果、分裂期中期染色体では1g、2gともに染色体末端部にのみシグナルが観察されたが、分裂期前期染色体では染色体の末端部以外に、1gでは長腕端からおよそ1/6の部位に、また2gでは同じく長腕端部からおよそ1/6の部位に弱いシグナルが観察された。このことは、1gおよび2gの介在部には、末端部に比べるとその量は少ないが、テロメアと同様の塩基配列が存在していることが解った。
以上、一年生キク科植物のHaplopappus gracilis (2n=4)KH-1の染色体は、近縁種であるH. ravenii (2n=8)の染色体から染色体の切断と融合によって再構築されたという仮説を、KH-1に人為的に照射した放射線により誘発された染色体の構造変化の解析とArabidopsis型テロメアの反復配列のFISHによって実証した。
論文: Interstitial Telomere-like Repeats in the Haplopappus gracilis (Asteraceae) Genome Revealed by Fruorescence in situ Hyvridization
Hidehiro Hanmoto 1, Ryohei Kataoka 2, Nobuko Ohmido 2 and Yoshihiko Yonezawa 3 1 Ohmiya High School, Saitama 330-0834, Japan 2 Graduate School of Culture Study Human Science, Kobe University, Nada, Kobe 657-8501, Japan 3 Department of Biology, Naruto University of Education, Naruto 722-8502, Japan Cytologia 72(4) :483-488,2007
生物の科学『遺伝』:体細胞分裂・分裂期染色体を鮮やかに手軽に観察する など
半本秀博・藤江正一(事務局)及び共著『詳しい解説の生物課題実験マニュアル』 教材生物研究グループ 【発行】東京書籍 1995
清水龍郎ほか共著『ニューサポート生物ⅠB』【発行】東京書籍 1999
長野敬 監修・半本秀博 著『読み解く高校「生物」ー生物ⅠB領域から現代的・社会的視点までー』【出版】研究会「科学と社会」【発行】東京書籍 2001
石川統ほか共著 教科書『生物Ⅰ』【発行】東京書籍 2006
細野春宏・本田章(事務局)及び共著『詳しい解説の生物課題実験マニュアル 改訂版』教材生物研究グループ 【発行】東京書籍 2011
長野敬、牛木辰男 監修・共同編修『サイエンスビュー生物総合資料 新課程』実教出版 2013
Hidehiro Hanmoto 1, Kazuo Fujikawa 2, Tesuo Itoh 3 and Yoshihiko Yonezawa 4
1 Ohmiya High School, Saitama 330-0834, Japan 2 Faculty of Science and Engineering, Kinki University, Higashiosaka 577-8502, Japan
3 Atomic Energy Research Institute, Kinki University, Higashiosaka 577-8502, Japan 4 Department of Biology, Naruto University of Education, Naruto 722-8502, Japan
Cytologia 68(4) :413-424,2003
学術論文:Cytogenetical Evidence for Latent Centromeres and Reactivation in Chromosomes of Haplopappus gracilis (Asteraceae)
Hidehiro Hanmoto 1, Yoshihiko Yonezawa 2 and Katsuhiko Kondo 3
1 Ohmiya High School, Saitama 330-0834, Japan 2 Department of Biology, Naruto University of Education, Naruto 722-8502, Japan
3 Laboratory of Plantchromosome and gene Stock, Graduate School of Science, Hiroshima University, Kagamiyama, Higashi-Hiroshima, 739-8256, Japan
Cytologia 72(4) :459-464,2007
学術論文:Induction of micronuclei in the root tip cells of Haplopappus germinating seeds by fission neutrons and X rays
核分裂中性子とX線によるHaplopappus発芽種子の根端細胞における小核の誘導
Hidehiro Hanmoto, Yoshihiko Yonezawa, Tetsuo Itoh and Sohei Kondo
Annual Report of Kinki University Atomic Energy Research Institute Vol.29,p.p.1-6 1992
学術論文:Persistence and elimination of smatic chromosomal changes induced by fission neutrons and X rays in seeds of Haplopappus gracilis(2n=4), an annual Compositae, during the growing stage
核分裂中性子あるいはX線によって一年生キク科植物ハプロパップス種子で誘発された体細胞染色体変異の成長過程での消長
Hidehiro Hanmoto, Yoshihiko Yonezawa, Tetsuo Itoh, Kazuo Fujikawa and Sohei Kondo
Annual Report of Kinki University Atomic Energy Research Institute Vol.30,p.p.1-11, 1993
学術論文:Hypersensitivity of Allium cepa seedling roots to X-rays for production of micronuclei
X線の小核誘起作用に対するタマネギ発芽種子根端分裂組織の高感度反応 Takayoshi Hori, Hidehiro Hanmoto, Ikuko Fujishige, Toshihiro Inoue, Kenji Taniguchi, Tetsuo Itoh,
Kazuo Fujikawa and Yoshihiko Yonezawa
Annual Report of Kinki University Atomic Energy Research Institute Vol.32,p.p.13-17, 1995